オーパギャラリーにて、「木のある風景」展が開催中だ。
5人のイラストレーターによるグループ展である。どの作家もレベルは高く、見知らぬ森に迷い込んだかのような錯覚に陥る好企画となった。
出品者のうち、井上文香さんと大広ようこさんの2人はイラストレーターズ通信の会員。
まずは、井上文香さんのレポートをお送りする。
ギャラリーのドアを開けて見回しても、よく知っているはずの井上さんの作品が見当たらず、戸惑った。
彼女はマーカーを使ってカラフルに仕上げた作品で、ここ何年か会員として在籍いただいている。
その作品が会場内になかったのだ。
戸惑う私に、会場にいらした井上さんが「私の作品はこちらです」と振り返った壁を指し示した。
そこに飾られていたのは、意外にも油彩画であった。
初めて見るタッチだが、よそよそしさはない。
むしろよく知っていた知人に偶然であったかのような、穏やかな親近感に満ちている。
暖かな日差しのように見る者を包み込む優しさがあった。
油絵だけれどこってりとした質感はなく、どこか水彩画にも近い雰囲気だ。
聞くと、オイルを多めに使って塗るのだという。
新展開だが、実は大学時代は油絵を学んでいた。
その後、イラストレーターを目指すにあたって一度は引き出しの奥にしまっていた技法なのだという。
最近になって、油彩でまた描き始めた。
とはいえ、イラストレーションの仕事で使うという意図はなく、あくまでプライベートな創作だった。
ところが、オーパギャラリーのオーナーに見ていただいて、この作風を気に入ってもらい、今回の企画展につながった。
さらには、油絵とマーカー作品両方を載せた画集も、つばめブックスから出ている。
油絵が、イラストレーター井上文香の、あらたな未来を切り開こうとしていることを感じる。
会期は、16日(水)まで。
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井上文香「イラストレーターズ通信」ページ
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「木のある風景」展
出品者:井上文香、大広ようこ、川崎真奈、篠原いづみ、豊福摩希子
2012年5月11日(金)-16日(水)
11時 - 19時まで(最終日は17時まで)
OPA gallery オーパ・ギャラリー
東京都渋谷区神宮前4-1-23.1F