2015年1月21日水曜日

電子書籍販売ページにおける書影利用にも流用代が必要です

ここ数年、出版社様と話し合ってきた、電子書籍販売サイトでの紙媒体の書籍のカバー画像の使用に関する問題に決着がつきましたのでご報告します。

結論から言うと、電子書籍販売ページにおける書影利用にも流用代が必要であることを、日本電子書籍出版社協会に認めていただきました。
これは、イラストレーターズ通信会員はもちろんですが、すべてのイラストレーターに当てはまります。

ことの始まりから説明します。
それは、2012年のことーー
始まったばかりのアマゾン電子書籍の販売ページを見ていたら、私が昔々に描いた新潮文庫のカバー画像が、その電子書籍版の販売ページでサムネール的に使われていることを、偶然発見しました。
購入すると、電子書籍本体のカバーには使われてはいませんでした。
しかし、購入した電子書籍のサムネール画像が本棚のように小さく並んでいくようです。(いわゆる本棚機能)
電子書籍本体に使われていないものの、販売ページや購入画面で紙媒体のカバーがサムネールとしてに流用されていることに違和感を覚えました。
カバーの著作権は、出版社にではなく、イラストレーターにあるはずだからです。
これは無断使用にあたるのではないか?
そう考えた私はイラストレーターズ通信の顧問弁護士に相談しました。
すると、「書籍カバーの著作権は、買い取りでなければ、そこに使用されているイラストレーションの作者にある。判例はないものの、今回の件は本来2次使用料が発生するべきものだと考えられる。」といった趣旨の回答をいただきました。

そこで新潮社様と連絡を取り、話し合いを重ねてきました。
結果、新潮社様の所属する日本電子書籍出版社協会様(http://ebpaj.jp)で、そうした利用にも著作権者の使用許諾が必要であることを認めてくださいました。
そして、協会内でガイドラインを作ってくださいました。
以下は、新潮社様の担当者よりいただいたメールの引用です。一部機種依存文字を書き換えています。(2014年12月12日のメールです)

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ガイドラインに関しまして
森様より2012年11月に「無断流用」のご指摘を受け、日本電子書籍出版社協会で
検討をかせね、電子書籍における底本の書影利用に関して2013年7月の運営会議にて
文書で配布しました。
配布文書は(A)電子版表紙許諾書ついて(B)冊子版刊行済の電子化許諾書(C)装丁依頼書の3種類です。
(A)の文書内で以下のこと確認しております。
 ↓
【前提・確認】
まず、現状「電子書籍における底本の書影または表紙の利用」状況は、大まかに
1)電子書書店等の販売・宣伝用にサムネイル画像を利用
2)ユーザーの購入記録の目的(いわゆる本棚機能)としてサムネイル画像を利用
3)電子書籍本体に利用(大きい画像)
の3種類で利用されています。
いずれの利用に関しても、「権利者の許諾が必要」であります。
 ↑
*対価に関しまして、利用の内容等で各個社判断ですることとする旨の口頭による説明がありまし
た。
*(B)(C)には利用範囲を明確にすること(電子書籍本体で利用するのか、書影としてサムネイル程度な     
のか)が盛り込まれれおります。ひな型ですので、各個社でアレンジして使用しております。

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このメールを受け取ったあと、
新潮社様から、
1)電子書書店等の販売・宣伝用にサムネイル画像を利用
2)ユーザーの購入記録の目的(いわゆる本棚機能)としてサムネイル画像を利用
で使われているケースでの流用代として、1冊2千円をお振込いただきました。
これは私だけではなく、すべてのイラストレーター(それぞれの書籍カバーの著作権者)に支払ってくださると約束をいただいています。

日本電子書籍出版社協会様に所属する他の出版社様も、責任を持って、上記に引用したメール通り対応していくそうです。
金額は各社が決めるので、協会で2千円と決まっている訳ではありません。

残念ながら、このガイドラインは、協会内で文書として配られただけで、協会のWebサイトでは公表されていません。
しかし、私がインターネット等に公開しても差し支えないとの承諾を得たので、ここで公開することとしました。

なお、このガイドラインは、日本電子書籍出版社協会様に所属する出版社のものです。
ここに所属していない出版社の無断使用に対しては、個別に交渉の必要があるでしょう。
協会に所属する出版社一覧はこちら。
http://ebpaj.jp/aboutassociation


新潮社様を通じて、日本電子書籍出版社協会様には、今もいくつかお願いしています。
1)電子書籍化された場合、その代表的な販売サイトのURLをイラストレーターに教えていただきたい。
2)イラストレーターに、電子書籍も献本していただきたい。
3)電子書籍普及後は、イラストレーターに支払っていただく電子書籍化の流用代を上げていただきたい。

いずれも、引き続き日本電子書籍出版社協会様で検討してくださるそうです。
ただし、現在は電子書籍の献本は技術的に難しく、小説家にも献本していないそうです。しかし、何らかの方法を考えてくださるそうです。

私が過去に描いた書籍カバーのイラストレーションは大量にあり、他にも様々な出版社使用しているのではないかと推測しています。
しかし、時間がなく、まだ探していません。

この無断使用の指摘にによって、仕事を失うかもしれない不安も強くありました。
しかし、イラストレーターの著作権がないがしろになったまま、慣例として定着しかねないことに、危機感を押さえきれず、声を上げました。
その声にに対し、新潮社様、および日本電子書籍出版社協会様は、誠意を持って対応してくださいました。
心からお礼申し上げます。