2018年5月9日水曜日

イラストレーションや印刷物のスキャニングのやり方(前編)

今や、プロフェッショナル・イラストレーターにとって、印刷物やアナログ作品をスキャニングするスキルは、必須でしょう。

皆さんは、正しいやり方を知っていますか?

当団体(イラストレーターズ通信)では、会員イラストレーターから年鑑掲載用の作品データを提出していただくのですが、間違ったもの、使えないもの、修正が必要なものが多くて困っています。
正しいやり方を知らない会員が、意外に多いようです。
イラストレーターという職業には上司も同僚もいないため、基本的なこともちゃんと教わる機会がないのだと感じています。


そこでここでは、プロフェッショナル・イラストレーターに特化した、印刷物やアナログ作品をスキャニングする方法を解説します。

やり方は、いくつかあるかと思いますが、これは団体主宰の森流一郎が普段行っている方法です。




1)必要なもの。

  • パソコン
  • スキャナ
  • Adobe Photoshop 


  • パソコン  

私が普段使っているiMACでの解説となります。
もちろん、Windowsでも構いません。 


  • スキャナ 
スキャナは、 エプソンのES-10000Gを使用しています。 

A3までスキャン可能なため、長年愛用しています。
A3まで対応していると、「マガジンサイズの雑誌」や「単行本カバーの表1から表4」あるいは「A3までのアナログ原画」を1回でスキャニングすることができて、とても効率的です。 

私の事務所では、2台のiMACに繋げて使用しています。
このようなUSBハブを使用すれば、4台までのパソコンを切り替えることができるようになります。 



A3スキャナは、少々お高いです。予算がない場合は、A4スキャナ(あるいはA4複合機)でも十分でしょう。
A4スキャナで大きなサイズをスキャンする場合は、2回(あるいはそれ以上の回数)に分けてスキャンし、後で画像をつなげれば問題ありません。
スキャナでプロに定評があるメーカーは、エプソンとキャノンです。このどちらかであれば安心でしょう。
複合機やプリンターは、顔料系のインクを使用した機種がおすすめだと思います。 

なお、ES-10000Gは生産中止となっていますが、アマゾンなら中古で購入可能です。


その他のA3スキャナはこちら。(CANON製A3スキャナは販売されていないようです)
 

A4スキャナはこちら。


スキャナとプリンターが一体になった複合機にする選択肢もありです。
コピー機としても使えるので、なにかと便利です。
複合機にする場合は(あるいはプリンターを購入する場合も)、染料系インクではなく、顔料系インクを使用している機種を選びましょう。 
染料系インクは、普通紙にイラストレーションを印刷すると滲んだり、紙がヨレヨレになってしまったりします。 
これでポートフォリオを作っても見栄えが悪いですね。 
プロフェッショナル・イラストレーターには、普通紙にも綺麗に印刷することができる、顔料系インクの機種がオススメです。 
最近は黒インクだけ顔料系のものが多いのですが、全色顔料系インクの複合機を選びましょう。


・Adobe Photoshop 
Adobe Photoshopは、プロフェッショナル・イラストレーターとして活動するなら必携のソフトだと思います。  
もし所有していない場合は購入しましょう。

Adobe Photoshop Elementsというソフトもありますが、これはアマチュア向きです。 
なぜなら印刷用のCMYKデータを作れないからです。 (※1)
印刷用データを作らないアマチュアにはこれで十分ですが、あなたがプロフェッショナルイラストレーターなら(あるいは本気でそれを目指すなら)、Adobe Photoshopを購入したいですね。 
Adobe illustratorも、プロ必携のソフトです。 
この二つのソフトは、セットでの購入をお勧めします。 

Adobe社のサイトから購入できます。https://www.adobe.com/jp/products/photoshop.html


アマゾンでも購入可能です。





2)今回スキャンする印刷物

今回は、私が装画を描いている書籍『ロストデイズ』のカバーをスキャニングします。



3)スキャニングの前に。
スキャニングの前に、スキャナの取り込み面をよく掃除しましょう。
私の場合、エアーダストで埃を吹き飛ばし、ウェットティッシュで拭いた後、普通のティッシュペーパーで仕上げ拭きをします。 
ウエットティッシュは、液晶用、スマートフォン用などもありますが、一般的なものでも十分だと思います。




4)環境設定
スキャニングの前に、スキャナの環境設定を確認しましょう。
スキャナのスイッチを入れて、スキャナが起動したことを確認してから、 EPSONのスキャニング用ソフト「EPSON Scan」を起動します。(CANONの場合は、そのソフトを使用してください。)
EPSON Scanのダイアログボックスの下の方にある「環境設定」の「カラー」を選びます。
私の場合はここで「色補正なし」を選んでいます。
自動的な色補正をすると、メリハリが強くなり、淡い色調が失われることがあるからです。
それよりもPhotoshopで自分の手で色味を調節した方が意図通りのものができます。 
とはいえ、これは作風や好みの問題でもあるので、「色補正なし」だけが正解というわけではありません。
メリハリがある作風の方は、自動露出を行っても問題ないのかもしれません。 
「ドライバーによる色補正」の場合は、ディスプレイのガンマ値を合わせましょう。ガンマ値をご自身で変更したことがないのであれば、おそらく2.2のはずです。 
「ColorSync」の場合は、「EPSON標準」と「Adobe RGB」の組み合わせがいいと思います。



環境設定を確認したら、実際のスキャニング作業に入ります。


5)スキャニング作業
書籍からカバーを外し、スキャナの取り込み面に載せます。


今回は、表1から表4にかけてを取り込みます。 


雑誌等をこのままスキャニングすると、裏写りすることがあります。 
裏にも何か印刷されたものをスキャニングする場合は、この上に黒い紙を敷きます。 
そうすることで裏写りを防ぐことができます。 
普段から、黒い画用紙か黒いケント紙等を用意しておきましょう。

このまま蓋を閉じます。

 EPSONのスキャニング用ソフト「EPSON Scan」を起動します。(CANONの場合は、そのソフトを使用してください。)
下はそのソフトが起動したパソコン画面です。 

さらに操作画面を拡大します。


 モードは、自分好みの設定で取り込める「プロフェッショナルモード」で行います。
「原稿種」は「反射原稿」
「取り込み装置」は「原稿台」
「自動露出」は「写真向き」となっていますが、私の場合は自動露出は使用しません。 
「イメージタイプ」は、より高画質な「48bitカラー」で取り込みます。 
RGBそれぞれの色を8bitで表す24bitカラー(8bit×3色)と、より高画質な16bitで表す48bitカラー(1色16bit×3色)があります。 
48bitカラー(1色16bit×3色)の方がより深みのある色再現が可能です。 
色補正を加えても劣化しづらいのも48bitカラー(1色16bit×3色)の方です。
プロフェッショナルな作品データとしては、48bitカラーで取り込む方がオススメだと思います。  
 ただし、このままでは印刷には不向きです。 
48bitカラーで取り込んだものを印刷用データとして納品する際は、フォトショップで上部のメニューから「イメージ」→「モード」で、「16bit/チャンネル」となっているものを「8bit/チャンネル」に変更しましょう。 
低価格なスキャナでは、「48bitカラー」での取り込みに対応していないのかもしれません。
その場合は、こうした設定はしなくとも問題ありません。 
そのままで「24bitカラー」でスキャニングされることになるはずです。

「解像度」は、回転等で画質の劣化を防ぐため多少大きめで取り込みます。
今回は「400dpi」にしました。
一般的な印刷用データの解像度は、カラーの画像だと「印刷されるサイズで350dpi」が最適です。(※3)
印刷用データを納品する際は、印刷サイズにリサイズして、解像度は350dpiにしましょう。 
「出力サイズ」は、特に理由がなければ「等倍」で行います。 

「調整」の部分の「自動露出」「ヒストグラム調節」「濃度補正」「イメージ調整」「カラーパレット調整」は、全てクリアな状態にします。 
「リセットボタン」を押せば、クリアされます。 
こうした自動調整は行わず、あとからPhotoshopで調節するのが私のやり方です。

アナログのイラストレーション原画を取り込むときは、以上の設定で取り込めば大丈夫です。
しかし、このまま印刷物をスキャニングすると、モアレが発生してしまう可能性があります。(※2)
印刷物を取り込む際は「モアレ除去」にチェックを入れましょう。
左横の参画をクリックすると、印刷線数を指定できます。
書籍カバーや雑誌のカラーページなどの一般的な印刷物なら「高品位(175lpi)」にしましょう。
プレビューボタンをクリックすると、プレビュー画面が出てきます。


取り込む部分を少し大きめに囲んで、スキャンボタンをクリックします。
すると、「保存ファイルの設定」というダイアログボックスが開きます。


 「保存先フォルダ」にはデータを保存したい任意のフォルダを指定します。 
「ファイル名」にはわかりやすい任意の名前を入力します。
日本語のファイル名をつけていると、他人にデータを渡した際、データを開けない等のトラブルの原因となる可能性があります。
半角英数字とアンダーバーで名前をつけましょう。 
保存形式は、データに劣化のない「TIFF」で行います。 
保存ができたら、「EPSON Scan」は閉じても大丈夫です。

前編は、取り込んだデータを保存したところまでとします。
中編では、取り込んだ印刷物の縦横を正確に合わせる作業、周りの余白をカットする作業になります。

イラストレーションや印刷物のスキャニングのやり方(中編)



(※1)印刷物のカラーは、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、黒)の4色で全ての色が再現されます。一方、パソコンモニターは、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の3色で全ての色が再現されます。この二つは全く違うカラーの再現方法であるため、完全な互換性はありません。RGBの色の一部がCMYKでは再現不可能になります。RGBのカラーモードで制作したカラーイラストレーションは、印刷用のCMYKに変換するとまるで異なる色になることがあります。その点、Adobe Photoshopの場合は、RGBで制作・スキャニングしたデータを印刷用のCMYKに変換することができるので安心なのです。CMYKで印刷された際にどんな色になるのか、確認した上で納品できるわけです。一方で、Adobe Photoshop ElementsはカラーデータはRGBにしか対応していません。CMYKに変換された場合にどんな色になるのか確認できないまま納品するしかありません。イラストレーションの作者として、印刷されてどんな色になるかわからない状態で納品するべきではありません。そのため、プロフェッショナルイラストレーターなら、Adobe Photoshop ElementsではなくAdobe Photoshopを選ぶべきなのです。

(※2)モアレは、印刷物を印刷した際に独特の模様ができてしまうものです。
詳細はこちら:https://ja.wikipedia.org/wiki/モアレ
モアレができてしまうかどうかは、印刷結果を見なくてはわかりません。
スキャニングしたデータからはわからないので、データを見て問題ないからと安心してしまわないようにしてください。
なお一般的なお仕事の場合は、色校正の段階でモアレに気がつくはずです。モアレが発生していればグラフィック・デザイナーや印刷会社が対応してくれるでしょう。
しかし、モアレが発生しないデータを納品するのもプロフェッショナルイラストレーターの仕事だと思います。


(※3)カラーの画像は350dpiが最適ですが、モノクロ画像は600dpi、モノクロ2階調は1200dpiが推奨されています。




イラストレーターズ通信会員は、会員専用掲示板にて、この記事の内容に関する質問をすることができます。間違いの指摘も歓迎します。
誠に恐れ入りますが、会員以外の方の質問には対応しておりません。
会員専用掲示板では、イラストレーターが仕事をしていく上での不明点、絵の描き方に関する疑問点・アドバイス、イラストレーターの仕事上のトラブルに関する相談など、さまざまな質問・相談が可能です。
イラストレーターズ通信:http://illustrators.jp

入会の案内はこちら:http://illustrators.jp/recruit.htm

※この文の著作権は森流一郎にあります。著作権法上の例外を省き、無断使用を禁じます。