2012年9月1日土曜日

会員展覧会レポート【苗村さとみ企画展「バカンス Les vacances de la femme(女の休暇)」】




最近、話題の書籍がある。
松本清張賞をとった『烏に単は似合わない』(文藝春秋)だ。
http://www.amazon.co.jp/dp/4163816100

書店では平積みされ、広告もよく見かける。
カバーイラストレーションを手がけているのは、イラストレーターズ通信会員の苗村さとみさん。
その苗村さんのグループ展が、ギャラリーダズルで開催中だ。
先日、その会場に行ってきた。

地下鉄外苑前の駅から外にでたとたん、思いがけないほどの暑さが、身体を包み込むように襲ってきた。
確か、その日の天気予報は、東京の最高気温は35度と告げていた。
アスファルトに覆われたこの街の実際の温度は、それ以上になっているはずだ。
会場に向かう足が、一歩、一歩、重くなる
到着する頃には、頭がもうろうとなりかけていた。

ようやく、会場に入ったところ、涼やかな空気に、頭もすっきりとしてきた。
冷房のおかげもあるだろう。
しかし、それだけではない。
苗村さんの作品が、涼しいバカンスの風を送ってきてくれたのだ。

展覧会のテーマは「バカンス」。
だから、どの作品も夏らしい。
しかし、暑苦しさはない。
つくづく思うーー
イラストレーションとは不思議なものだ。
夏らしいのに、涼しさを生む。

会場正面に並んだ、作品の前にしばし立ち止まる。
女性と花が描かれたものが5点。
美しきモチーフの競演に見とれる。
そして不思議な涼しさに心をゆだねる。
そう、確かにこれはバカンスの気持ち良さだ。

彼女はこれまでも一貫して、大正ロマンの香りあふれる作風で、花と女性をテーマに創作活動をしてきた。
独特の世界観に、使用される仕事の範囲が狭まるという面もあろう。
しかし頑固に守り続けてきたことで、技術・センスに磨きがかかり、近年の作品は驚くほど上質になった。

浴衣姿で迎えてくれた苗村さんに好きなイラストレーターを聞くと、
高畠華宵、高橋真琴、藤田ミラノの名前が挙がって、なるほどと納得する。
どこか高貴な気品は、彼らから受け継いだものだったのだろう。

どうか更なる高みを目指してほしい。
大好きだという偉大な先達に並ぶほどに、自分の世界を完成させてほしい。
期待が大きく膨らんだ。

ギャラリーをでると、またあの暑さが戻ってくる。
つかの間のバカンスが終わったような寂しさを感じた。

展覧会は9月2日まで。
未見の方は、お急ぎ下さい。

(イラストレーターズ通信主宰/森流一郎)




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苗村さとみ「イラストレーターズ通信」会員ページ
http://www.illustrators.jp/profile.php?id=0040


バカンス Les vacances de la femme(女の休暇)
会期:2012年8月28日(火)~9月2日(日)
   12:00~19:00(月休・最終日は17:00まで)
場所:Gallery Dazzle
   東京都港区北青山2-12-20 #101
ギャラリー Webサイト:http://gallery-dazzle.com/

出品者:大窪洋子 草野文香 友田萌衣 苗村さとみ 中村奈々子 村瀬エレナ (DM掲載順・敬称略)