2012年4月18日水曜日

会員展覧会レポート【江頭路子 個展「いつか みた けしき」】



江頭路子さんの個展を見てきた。
彼女は、第2回「イラ通」コンペの入選者。
最近、注目している新人の一人だ。


ギャラリーの外から会場をのぞくと、いくつもの水彩画が静かに並んでいる。
それを見た瞬間から何かが私の中でこみ上げてきた。
この感情は何だろう……
会場に入る前から、何かの感情がわき上がってくることはそうない。
しかも今回はその感情の正体がすぐには分からなかった。


分からないままに、ギャラリーに入った私の前に広がる作品たち。
作品と向かい合っていると、ますます大きくなった何かが私の心を、キュッとつかむ。
不思議な体験だった。


新作のイラストレーションは、これまで以上に淡い色使いになってきているようだ。
以前の作品にあった、細かい描き込みは潜め、もっと大胆な筆致で、しかし繊細な世界を表現している。
特に、会場に入って右手奥下にあった作品の、内相的な少女の瞳が印象的だ。
その瞳と向かい合っているうちに……
この感情の正体が分かった。
それは、「切なさ」だ。


江頭路子さんの作品に知らず知らず心を動かされ、「切なく」なっていたのだ。


自分自身でそのことに戸惑いつつ、彼女に尋ねた。
「これは江頭さんの心の中を表現しているのですか?」
「うーん」と、印象的な笑顔で、少し小首をかしげて、それから天井を見上げた。「そうかもしれないです。きっとそうですね」
そういって私を見返してきた。
その眼は、絵に描かれていた瞳にそっくりだった。


この作品は、彼女自身知らず知らずのうちに、自分自身の内面を表現しているのかもしれない。
私が勝手にそう感じただけかもしれない。
どちらなのかは分からないが……
ギャラリーを後にしながら、あの印象的だった作品の瞳が頭の中からはなれなかった。

心に残る「いい」展覧会だった。


21日(土)まで。


(森流一郎)





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江頭路子「イラストレーターズ通信ページ
http://www.illustrators.jp/profile.php?id=0665&mode=profile


江頭路子、英語ページ
http://www.illustrators.jp/e_profile.php?id=0665


会期: 4/16(月)から 4/21(土)

時間: 11:30から19:00  (土曜日17:00まで)
会場: ギャラリーハウスMAYA(東京都港区北青山2-10-26)

http://www.gallery-h-maya.com/